コラム
遺言信託について
1. はじめに
「遺言信託」という言葉を見聞きする機会が増えましたが、その意味は二種類あると言われています。
一つは、信託法に基づき、遺言で信託を設定することです。もう一つは、信託銀行などの金融機関が遺言執行者となるサービスの名称で、普段目にする機会が多いのはこちらかと思います。
2. 金融機関による「遺言信託」について
金融機関による「遺言信託」とは、金融機関が公正証書遺言の作成をバックアップし、その後も遺言書の保管から相続発生後の遺言執行までの手続を一貫して引き受けるものです。概ね各段階で手数料が発生する仕組みとなっており、契約時に数十万円、遺言書の保管費用として毎年数千円、遺言執行時に相続財産の額に応じた割合(数パーセント)の手数料が生じます。
実は、この「遺言信託」は、信託法とは関係がなく、金融機関でなければできない業務というわけでもありません。
公正証書遺言の作成は弁護士をはじめとする法律専門家の取扱業務の一つであり(弊所では10万円からお受けしています)、作成した公正証書を金融機関に預けなくとも、原本は公証役場で保管されます。遺言書を作成した弁護士が遺言執行者になることもできます。
いったん金融機関と「遺言信託」契約を締結したものの、後々になって相続発生後に多額の執行費用が生じることに疑問を持たれ、相談に来られる方もいます。
また、相続人の一人が遺言の内容に協力しないなど、相続人間での対立が予想されるケースでも遺言執行者が必要になりますが、このような紛争性の高い事案では、金融機関では引き受けが難しいのが現状です。
遺留分に配慮しない遺言書により、相続発生後に遺留分減殺請求がなされるなどして紛争化するケースも増えており、結局は法律専門家に改めて依頼せざるを得なくなることもあります。
3.最後に
もし、遺言書の作成をご検討されているのであれば、複数の弁護士が在籍する弁護士法人に、ご依頼されることをお勧めします。
弁護士法人であれば、一人の弁護士の健康状態等の事情に左右されることなく、遺言書作成から保管、遺言執行者として定める場合はその執行業務まで、一貫したサービスを提供することができますし、万が一、業務遂行の過程で紛争が発生した場合は、スムーズに対処することが可能となります。
遺言書作成をご検討中の方は、是非一度、この分野に詳しい弁護士にご相談いただきたいと思います。
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