コラム
Q.信託をする場合に、税務署に提出すべき書類はありますか。
1 結論
信託の効力発生・権利内容の変更、受益者変更、終了は、調書の提出事由です。また、収益があれば受益者別に提出が必要です。
2 信託開始時について
信託は自益信託(委託者と受益者が同じ場合)の場合が多いと思われますが、自益信託の場合は税務署への提出書類は不要です。また、他益信託(委託者と受映写が異なる場合)でも、受益者別に評価した信託財産の相続税評価額が50万円以下の場合も、税務署への提出書類は不要です(相続税法59条3項但書、同法施行規則30条7項)。
それ以外の場合、すなわち、他益信託かつ信託財産の相続税評価額が50万円を超える場合は、信託の効力が生じたときには、その効力発生月の翌月末日までに、信託に関する受益者別(委託者)調書及び合計表を、受託者の事務所等の所在地の所轄税務署に、提出しなければなりません(相続税法59条3項)。
3 信託契約期間中について
受託者は、受益者別に、毎年1月31日までに、前年の信託財産の状況等を記載した「信託の計算書」及び「信託の計算書合計表」を、受託者の事務所等の所在地の所轄税務署に提出なければなりません(所得税法227条、同法施行規則96条)。
ただし、各人別の信託財産に帰せられる収益の額の合計額が3万円(計算期間が1年未満の場合には1万5000円)以下の場合には、提出が不要となる場合があります(所得税法施行規則96条2項以下)。
なお、受益者が個人の場合であって、信託不動産から収益を受けている場合には、当該受益者は、毎年の確定申告の際に、受益者の確定申告書に「不動産所得に関する明細書」として、通常の不動産所得に関する書類(収支内訳表等)、信託から生じる不動産所得に係る明細書を添付しなければならないことにも注意が必要です。
4 信託契約の変更時
受託者は、当該信託に係る権利内容の変更、受益者の変更があった場合には、当該提出事由の生じた日の属する月の翌月末日までに、信託に関する受益者別(委託者)調書及び合計表を、受託者の事務所等の所在地の所轄税務署に、提出しなければなりません(相続税法59条3項2号、4号)。
ただし、受益者別に評価した信託財産の相続税評価額が50万円以下の場合には、提出は不要です(相続税法59条3項但書、同法施行規則30条7項)。
5 信託契約の終了時
受託者は、信託が終了した場合(信託に関する権利の放棄その他一定の場合を含む)には、信託が終了した日の属する月の翌月末日までに、信託に関する受益者別(委託者)調書及び合計表を、受託者の事務所等の所在地の所轄税務署に提出しなければなりません(相続税法59条3項3号)。
ただし、残余財産がない場合、信託の終了直前の受益者が残余財産の給付を受けず、帰属者とならない場合、受益者別に評価した信託財産の相続税評価額が50万円以下の場合には、提出は不要です(相続税法59条3項但書、同法施行規則30条7項)。
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