コラム
Q.賃貸不動産を信託するときに、注意することはありますか。
1 結論
負担付贈与(敷金返還債務付きの贈与)と扱われ、賃貸不動産の価額が通常の取引価額で評価されることを防ぐため、賃貸不動産の信託と同時に、敷金返還債務相当額の金銭についても信託を行うことが考えられます。
2 負担付贈与に対する課税
賃貸不動産の信託を行う際に、委託者と受益者を別々にする場合があります。これを他益信託といいます。
他益信託の形で賃貸不動産を信託する場合、受益者は信託により賃貸不動産の贈与を受けたものと扱われます。また、賃貸不動産と同時に敷金返還債務も承継したと扱われますので、負担付贈与を受けたのと同様に扱われます。
負担付贈与の場合、賃貸不動産の価額は、相続税評価額よりも評価額が高い通常の取引価額によって評価されることになります。通常の取引価格により評価されてしまうと、多額の贈与税が課税される可能性が出てきます。(No.4426負担付贈与に対する課税)
(負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について|国税庁
3 同時に敷金債務相当額の金銭の信託も行う
このような場合でも、信託設定時に、当該敷金返還義務に相当する現金の贈与を同時に行い、受益者に実質的に敷金返還債務を承継させないようにしていると言えるような場合は、上記のような負担付贈与通達の適用はないとされています(賃貸アパートの贈与に係る負担付贈与通達の適用関係)。この方法によれば、負担付贈与にかかる多額の贈与税の課税を予防することができます。
このため、賃貸不動産を信託する場合は、敷金債務相当の金銭の信託も同時に行うことを検討する必要があります。
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